こんにちは。サウンドテックの友淵です。

今回は、Technics SL-1500CにAudio-TechnicaのVM500シリーズ、VM700シリーズを取り付けて、7種類のカートリッジを聴き比べてみました。
今回比較したのは
・AT-VM510xCB
・AT-VM520xEB
・AT-VM530xEN
・AT-VM740xML
・AT-VM745xML
・AT-VM750xSH
・AT-VM760xSL
の7モデルです。

価格は15,400円から96,800円まで。
針先も、丸針、楕円針、マイクロリニア、シバタ、特殊ラインコンタクトとかなり違います。
今回知りたかったのは、
ひとつ上のモデルへ替えた時に、何が変わるのか。
同じような針先でも違いはあるのか。
そして、その違いに自分なら価格差を払いたいと思うのか。
同じレコードの同じところを何度も聴きながら、一つずつ交換してみました。
先に言ってしまうと、
思っていた以上に違いました。
そして、思っていた以上に迷いました。笑
そもそもVMカートリッジとは?
「VMカートリッジって何?」
という方もいらっしゃると思いますので、まず簡単に。
レコード盤の溝を針がなぞり、その細かな振動を電気信号へ変えている部分がカートリッジです。
つまり、レコードに刻まれた音を読み取る最初の入口です。
今回比較するAudio-TechnicaのVM型は、MM型と同じように磁石を動かして発電するタイプのカートリッジ。

オーディオテクニカ様より画像をお借りしております。
細かな仕組みは一旦置いておいて、「レコードの音を最初に拾う部分」くらいに考えていただければ大丈夫です。
面白いのは、その針にもいろいろな種類があること。
今回だけでも、
・接合丸針
・接合楕円針
・無垢楕円針
・Microlinear
・Shibata
・Special Line Contact
と、かなり種類があります。
「そんなに必要なの?」
と思いますよね。笑
でも実際に替えてみると、声、低域、余韻、音場、奥行きなど、意外といろいろ変わります。
今回改めて、
「針って面白いな」
と思わされました。
今回比較した7モデル
今回お借りしたのは、VM500シリーズ3モデルとVM700シリーズ4モデルです。
価格だけでなく、針先の構造やカンチレバーにも違いがあります。
ここは文章だけで並べるより、写真と一緒に見てもらった方が分かりやすいと思います。
¥15,400(税込)
¥17,600(税込)
¥33,000(税込)
¥39,600(税込)
¥55,000(税込)
¥60,500(税込)
¥96,800(税込)
こうして並べると、かなり価格差があります。
一番下のAT-VM510xCBと最上位のAT-VM760xSLでは約6倍。
この価格差が実際にどんな違いとして聞こえるのか。
ここからが今回の本題です。
自分で買うつもりで聴きました。
今回この比較をしたのには、個人的な理由もあります。笑
6月に自宅用としてTechnics SL-1500Cを購入しました。
6月26日のメルマガでは、上位モデルのSL-1300Gとの比較もご紹介しています。
実はその少し前、Audio-TechnicaのVM700シリーズをお借りして聴く機会がありました。
その時、
「針を替えるだけで、こんなに聴こえ方が変わるんだ」
と感じたことが印象に残っていました。
細かなところまでよく見えるもの。
声が自然で、余韻が最後まで聞こえるもの。
低音が気持ち良いもの。
上位モデルだから、何もかも自分の好みというわけでもありません。
それが面白くて、
「自分のSL-1500Cにも何か一本欲しいな」
と思うようになりました。
そこで今回はVM500シリーズまで含めて、実際に自分のお金で買うつもりで比較してみました。
今回の試聴システム
今回の試聴システム
今回使用したシステムはこちらです。
ターンテーブル
Technics SL-1500C
フォノイコライザー
Accuphase AD-60
アンプ
Accuphase E-3000
スピーカー
Monitor Audio Studio 89

今回はSL-1500C内蔵のフォノイコライザーではなく、Accuphase E-3000にAD-60を装着して試聴しました。
E-3000は店頭で常設展示しているアンプですが、AD-60は本体内部に増設できるフォノイコライザー・ユニットです。
外付けのフォノイコライザーを増やすことなく、E-3000でレコード再生を楽しめるのも良いところ。

せっかく7モデルを比較するので、それぞれの違いができるだけ分かりやすい環境で聴いてみたい。
ということで、この組み合わせを使ってみました。
今回の感想は、SL-1500C+AD-60+E-3000+Studio 89というシステムで、私が実際に聴いて感じた印象としてご覧ください。
2曲で聴き比べました
使用したのは、

Michael Jackson「Thriller」

「ジブリをうたう」 幾田りらさんの「いのちの名前」。
「Thriller」ではボーカルはもちろん、低域や効果音、左右への広がり、奥行き。
最初のドアの軋む音、歩く音の移動の感じ、狼の遠吠えなども。
「いのちの名前」では声の透明感や余韻、小さな音からの立ち上がり。
性格の違う2曲で比較しました。
510から520。最初の一段でも違う


まずはAT-VM510xCBからAT-VM520xEBへ。
510は接合丸針、520は接合楕円針です。
「Thriller」で最初に感じたのは低域でした。
520にすると低域が出るようになり、音の輪郭もはっきりします。
楕円針なので高域側の変化が先に分かるのかなと思っていましたが、最初に耳へ入ってきたのはベースやドラムでした。
「いのちの名前」では、声の透明感が上がり、輪郭も出てきます。
一つ上げただけでも、
「ちゃんと違うな」
と感じました。
520から530。同じ楕円針でも違う

次はAT-VM520xEBからAT-VM530xEN。
どちらも楕円針ですが、520は接合針、530は無垢針です。
正直、ここはそれほど変わらないかと思っていました。
ところが「Thriller」では声が自然になり、余韻も増えます。
「いのちの名前」ではさらに分かりやすく、声が消えていくところの余韻まできちんと聞こえ、音場も広くなりました。
「同じ楕円針でも結構違うな」
と感じた比較です。
530から740。ここはかなり違いました

次はAT-VM530xENからAT-VM740xML。
ここは2曲ともかなり違いました。
「Thriller」の冒頭には、軋んだドアを開けるような効果音があります。
740にすると、その音が急にリアルになります。
ただ「ギーッ」と鳴っているのではなく、そこにドアがあって実際に動いているような感じ。
左右への広がり、奥行きも出てきました。
「いのちの名前」では、曲が始まる前の静けさが印象的です。
静かなところから小さな音がスッと立ち上がり、音場も広くなりました。
自分の中では、ここが今回最初の大きな境目。
530までは「音そのもの」を聴いていましたが、740になると「その音がどこで鳴っているのか」まで気になってきます。
740から745。同じMicrolinearでも違う

AT-VM740xMLとAT-VM745xMLは、どちらもMicrolinear針です。
ただし745にはソリッドボロンのカンチレバーが使われています。
「Thriller」では、横方向への広がりがさらに大きくなりました。
特に曲中の狼の遠吠えが、さらに遠くまで抜けていく感じ。
輪郭もはっきりし、試聴メモには、
「立ち上がりが早い」
と書いていました。
「いのちの名前」では、横方向より奥行きが印象的。
繊細なところまで聞こえ、声の高域もスッと伸びます。
同じMicrolinearでも違う。
ここも面白い比較でした。
745から750。曲によって印象が変わる

次はAT-VM750xSH。
「Thriller」では奥行きが増し、繊細なところまで聞こえながら、音に厚みも感じます。
一方「いのちの名前」では、
「声に芯がある」
という印象でした。
そして横方向にも広がります。
この辺りまで来ると、
「どれが一番良い?」
より、
「自分は何を聴きたい?」
の方が大事になってくるように感じます。
最上位760。印象に残ったのは「静かさ」

最後はAT-VM760xSL。
情報量はもちろん多いのですが、それ以上に印象に残ったのが、
「静か」
ということでした。
2曲とも、音楽の背景が一段静かに感じます。
音と音の間に余計なものが少なく、一音一音が浮かび上がってくる感じ。
背景が静かだからこそ、小さな音や余韻が見えやすくなり、それが情報量の多さにもつながっているように感じました。
7本聴いて感じたこと

今回7本を順番に聴いて感じたのは、
「高いものほど単純に良い」
ということではありませんでした。
声が自然に聞こえるもの。
立ち上がりが気持ち良いもの。
奥行きや広がりを楽しめるもの。
それぞれに違った面白さがあります。
さらに「Thriller」と「いのちの名前」でも、印象に残るところが変わりました。
聴くジャンルや、その日の気分によって針を替えてみるのも面白そうです。
VMシリーズは交換針を替えやすいのも面白い
今回、もう一つ良いなと思ったのがVMシリーズの使いやすさです。
対応する交換針には互換性があるため、毎回ヘッドシェルからカートリッジを取り外して付け替えなくても、先端の交換針を差し替えて楽しむことができます。

交換針を取り外して

交換針をつけるだけ。
ヘッドシェルはそのまま。
カートリッジの取り付け位置もそのまま。
先端の交換針を替えるだけなので、思っていたより気軽です。
「今日はボーカルを聴きたいから、この針」
「今日は細かな音や空間表現を楽しみたいから、この針」
そんな使い分けもできます。
「今日は何を聴こう」
に、
「今日はどの針で聴こう」
が加わる。
こういう遊び方ができるのも、レコードの面白さだと思います。
その分、交換針代がかかりますが、、、笑
SL-1500Cを、少しずつ育ててみます
今回をきっかけに、SL-1500Cでもまだ試してみたいことが出てきました。
カートリッジ。
交換針。
フォノイコライザー。
セッティング。
プレーヤーを買った時が完成ではなく、そこから少しずつ自分の好きな方向へ変えていく。
これから、
「SL-1500Cを育てる」
という感じで、少しずつ試してみたいと思っています。
いつものレコードを、もう一度楽しむきっかけに
今回の比較で改めて感じたのは、新しいアンプやスピーカーを買わなくても、針を替えるだけで、いつものレコードが新鮮に聞こえることです。
「Thriller」では、
「こんなに奥行きがあったんだ」
「いのちの名前」では、
「こんな余韻が入っていたんだ」
と気付かされました。
今使っているカートリッジに大きな不満がなくても。
昔から同じ針を使い続けている方も。
レコードは好きだけど、
「何か新しい楽しみ方はないかな」
と思っている方は、一度交換針を替えてみるのも面白いと思います。
いつも聴いている一枚から、
「あれ、こんな音も入っていたんだ」
と、新しい発見があるかもしれません。
今回の記事が、今持っているレコードをもう一度楽しむきっかけになれば嬉しいです。
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